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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

「大法輪」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页

青空文庫

その誓いの通りなさんした、源兵衛さんは、凡夫でいながら聖も同然。見れば開山聖人さまの御影像も泣いていやしゃります。源兵衛さんは本望であろうわいなあ。わたしゃもう、歎きも、哀しみもいたしますまい。(首にものいう如く)期するところは極楽浄土。一つ台で花嫁花婿。のう、こちの人、※(歌記号、1-3-28)忘れまいぞえあのことを。いや、※(歌記号、1-3-28)忘れられぬぞあのことを。※(歌記号、1-3-28)忘れられぬぞあのことを』(唱えつつ首の包みに額を押しあて泣きむせぶ。舞台一同のものも落涙)

蓮如『時は末法、機は浅劣。聖道永く閉じ果てて、救いの術はただ信心。他力易行と教えて来たが、思いに勝さる事実の応験。愛慾泥裏の誑惑の男と女がそのままに、登る仏果の安養浄土、恐ろしき法力ではあるなあ。この上は源兵衛に続いてわが身も一しお、老いの山坂厭いなく、衆生済度に馳せ向わん。有難し、忝なし、源右衛門。源兵衛。(合掌しつつ和歌を口ずさむ)

あひがたき教へを受けて渇仰の、

かうべはこゝに残りこそすれ』

(衆僧経の諷誦の声にて、舞台一同合掌礼拝。)

――幕――