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きょうふのきせつ
叢書名著の復興1 恐怖の季節
三好 十郎
三好十郎『叢書名著の復興1 恐怖の季節』。同一底本的分册已合并为一书。收入:恐怖の季節、斬られの仙太。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 页
う」
「けっこうです。で、どんな事を書いてくださいます?」
「この十年あまり、ぼくらは、いろんな物を食わされて来ました。あまり食いたくないものも、食わされて来ました。すこしちがった意味で、現在もそうです。胃の腑が妙なふうになっています。なんとかしないと、気分が悪いし、カラダのためにも良くない。それには、吐くのが一番だろうと思います。いきおい、私の書くことは、ヘドないしは、ヘド的になりますよ。どうせキレイなものではない。ただ吐きっぱなしにはしたくありません。吐いた物の中にも、もう一度洗って煮て噛んで、のみこんで消化すれば滋養になるものが、まじっているかも知れない。そんなものが有ったら、ヘドの中をかき捜し拾いあげて、食います。今のぼくらの身分では、きたないなどとは言ってはおれません。つまり、こうなんです。ぼくらは、この十年二十年を虫のせいや、カンのせいで生きて来たのではない。それぞれ、セイいっぱいにやって来たのです。その中に、取りかえしのつかない、否定的な事がらが、どんなに充満していたとしても――事実充満していましたが――それを否定するあまり、また、すべての否定に附きものであるところの感傷的、英雄主義に酔って、この十年二十年の内容の全部――つまり、ぼくらにとって肯定的な事がらをも含んでいる実体――と言うよりも、