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きょうふのきせつ

叢書名著の復興1 恐怖の季節

三好 十郎

三好十郎『叢書名著の復興1 恐怖の季節』。同一底本的分册已合并为一书。收入:恐怖の季節、斬られの仙太。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 页

青空文庫

お願い……。

隊二 じゃから、何という者か? どこだ?

男一 か、か、川尻で中山忠蔵と申しまする。

隊一 おお、貴様が川尻の郷士忠蔵か。百姓どもをはたいて大分、ため込んだというなあ。米倉だけで十何戸前だとか。たしか、本隊から玄米百俵だけ徴収、借受けるよう達してあった筈だが、持って来たのか?

男一 はい、百俵なんど、私などのところに、一度に、それ程はございませんで、こ、こんど三十俵だけ馬につけて参じまして麓まで、へい。あとあとは、また、あとあとで、たしかに……。

隊一 よかろう。

男一 へい? そ、それではここで戻りましても……?

隊二 馬鹿、山上へ行くのだ。あまく見るなよ、忠蔵とやら。貴様からはたき抜かれた百姓の子供やなんぞが、この山には大分いるぞ。しかも、いまごろまで呼出しを延引したこともあり、かたがた、そのチョンマゲが、その胴についているものやらいないものやら、保証は出来ぬ。此処ではわからぬ、山へ行けっ!

男一 へええっ!

隊一 (歩哨に)この者は?

歩哨 下妻の物持で戸山それがし――。

隊一 おお、長兵衛という奴だ。そうか貴様が戸山長兵衛か黄金二百両、そうだったな? 帳面を見るまでもない、佐藤先生のいっておられたのを憶えている。