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くちぶえをふくぶし

口笛を吹く武士

林 不忘

「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页

青空文庫

「お侍さま、このとおり、お詫びを――。」

と、かれは、緊張して、顔いろが変っていた。大きな計画のまえに、いまこんなことで騒ぎになり、人眼をひいたりしてはならない。問題を起すようなことがあっては、同志に済まない。それに相手は、どんな人物であるかもわからないのだから――。

「とんでもない失礼なことを申しまして――。」

が、狂太郎は、黙ってはいってきて、その新六のそばを、畳を踏み鳴らしてとおり過ぎると、まだ窓ぎわに立ってにやにやしていた武林の胸を、とんと突いた。

「貴様か。いま何かいって笑ったのは。」

気の短い武林である。突っ立ったまま、むっとした顔で、なにかいっそう事態を悪くするようなことをいいそうな顔なので、新六は、はらはらした。

膝でにじり寄って、とり縋るように、

「いえ。つい、わたくしめが、お気にさわるようなことを申しましたので――。」

「黙っておれ。」

狂太郎は、武林唯七の襟をつかんで、ぐいと締め上げた。

「こいつ、騒がんな。体の構え、眼の配りが、どうも尋常でないぞ。」

それでも唯七は、狂太郎をにらんで、ぬうっと立ちはだかっている。

新六は、あわてた。