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ふるいこよみ

古い暦

長谷川 時雨

私と坪内先生

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,097 字 · 5 页

青空文庫

先生は、私が「浮舟の巻」という題で、二幕ものの、「源氏物語」宇治十帖の中の浮舟のことを書いてゆくと、それに目を通してくださりながら、二幕目に大薩摩があって、浮舟の君と匂う宮のすだまとの振事じみたところがあると、急に顔色がうごいて、節をつけて朗読なさりはじめた。そして無条件に気に入ったと見え、杉谷代水氏に見せるから置いてゆけといわれ、すぐに誰方だか呼ばれ――代水氏だったかも知れない。も一度節をつけて読んでくださって、それがそのころ権威ある「早稲田文学」誌上に載せられた。

そんなことでか、もしくは、この弟子が、すこしばかり音曲を解するので、教えておいてくださろうとの御志であったのであろうが、御自分の作に節がつき振がつくとよく御案内くださった。「お七吉三」の試演が、余丁町の舞台である日、その前日の下ざらいを拝見して、その日の舞台を楽しみにしていると、速達が来たりした。

いまこれを書きかけたところへ、急用の人が来て、締切りも時間も間にあわず残念ながらつい先日人に見せた、先生自筆の速達絵はがきが見つからないが、文意はこうだった。

――今日試演前に、も一度下ざらいするが、直した箇所があるから、見にきてくれ。