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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

ルスタムは、目を瞑り、胸一杯その香を吸うと、坐りなおして跪いた。彼は重い体を伏せて、恭しく小さい赤い焔を拝した。そして沈黙の永い祈祷に入った。ルスタムの胸には、数年来覚えなかった神への切な祈願があった。彼は、自分の心も体も、こういう有様になって来ると、自分の力ではどうにもしようのないのを感じた。縺れた思いを解くにも、弱った体力を鼓舞するのも、外からの救いがいる。彼の祈りはこうであった。

「大神アウラ。卿の老いたる僕ルスタムは、今ここに清き火を燃き穢無き心で卿に会えようとしています。何卒恵み深き啓示を下し給え。儂が、あのツランの若者に対し、このように深く頻りに憧れる心持は、全く老ぼれ爺の弱い妄念なのでありましょうか。または、夢より奇な事実でしょうか。――若し真の敵ならば、アウラよ。恵み深いアウラよ。今一度このルスタムに昔時の力を借し給え。ルスタムは、ルスタムらしく終りたい。万一、あの若者が我が血を嗣ぐ者ならば、今夜、まだ命が互にあるうちに、何かを以て暗示し給え。――儂は、荒くれた戦士に許されるだけの聡さで心の目と耳を開き、卿のささやかな声を聴こうとします」