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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
彼はルスタムを案じ、余程前からそこに忍んで気勢を窺っていたのだ。ルスタムは、ギーウの友愛に、辛い感謝を感じた。二人は、連立ってルスタムの天幕に戻った。その夜深更まで、二人は協議を凝した。それは、全く、ギーウが云ったとおり、予想もし得なかった問題についてであった。――ルスタムが、若し明日の決戦で再び立てなくなった場合には、どうするという善後策である。ギーウは、燈の油が尽きかける頃迄いた。ルスタムは、ギーウが帰ってから臥床に横わり燈を消し、永いこと闇を見つめていた。
ちょうど彼の眼の見当に一筋天幕のすきがあり、そこから、顫える銀糸のような繊い月光が流れ込んでいた。ルスタムは、さっき神に捧げた祈りの答えは、何故ともなくその月のやさしい清い光波に乗って来そうに思った。飽ることなくその点を見守っているうちに、精神は空に移る月の通り下へ、下へと降り、静謐な、堪忍強い力に落付いた。半(なかば)睡りかけたルスタムの心にふと「明日は大かた」というような文句が湧いて消えた。彼は、はっとして目を瞠り四辺を見た。月光は先刻よりやや低いところから、短い蕁麻の葉を浮き上らせ、地面にずっと流れている。