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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

そして、絶間なく、スーラーブの開いている口に頬をつけて息のあるなしを確めた。二人の卒が、スーラーブの体の上に、彼等の上衣をひろげて持ち日除けを作った。

ギーウの姿が目に入ると、ルスタムは、遠くにいるのに、

「どれ、どれ!」

と手を出した。

ギーウはすまない顔をして首をふり叫んだ。

「――ない!」

五十二

「どうして? 王の処にない筈はない。きのう、儂は袋を確かに見た」

「袋はある。あるのだが――」

ギーウは、ルスタムの耳に囁いた。

「王は渡さない。ツラン方に卿の息子がいたなどということはない、というのだ」

「!」

ルスタムは、拳を握って立上った。

「よし。儂が行って来る」

が、痙攣が起り出したスーラーブの姿を見ると、ルスタムは、砕けるようにギーウの手をつかみ、たのんだ。

「どうか見てやってくれ。すぐ来るが。――それから、万一訊いても儂の名はきかせてくれるな」

ルスタムは、王の天幕まで、つきない砂漠でも横切るように永くはかどらなく感じた。天幕に入って見ると、王は至極落付かない風で、手を後に組み、寛衣の裾をけって彼方此方歩いている。彼は、ルスタムの入って来るのをじろりと流眄で見、歩きかけた廻りをつづけた。