轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

強て、何とかしようとする焦心は、一層、スーラーブの感情を苦しくした。

彼は、いたたまれない様子で、いきなり立ち上った。そして、真直に母の前を横切り、内房に属する柱廊に出た。

そこには、日増しに暖くなって来た四月のツランの日光が、底に快よく肌を引しめる雪解の冷気を漂わせながら、麗らかに輝いている。スーラーブは、思わず貪るように新鮮な外気を吸い込んだ。そして不思議に混乱した力を、再び集めとり戻そうとするように、立ち止まって、拳を一二度握りしめ、開きし、のろい歩調で、柱廊の端迄出て行った。

粗い、自然石を畳みあげた拱(アーチ)の中からは、一目に城内の光景が見晴らせた。

つい傍に迫っている建物の翼のはずれでは、六七人の男が坐り、白い纏布をうつむけ、調子よく体を動かしては、武器の手入れや、新しい弦の張工合をすかして見ている。

遠く家畜小屋の附近では、活溌な猟犬の吠え声が聞えた。強い羽ばたきの音を立てて、ぱっと何処かの軒から鳩が翔(と)び立つ。

不規則な点滴の音や、溶け始めた泥濘に滲みながら鋭く日に燦(かがや)く残雪の色などは、皆、軟かな雲一つない青空の円天井に吸い込まれ、また軈(やが)て、滋味に富んだ陽春の光線となって、天からふりそそいで来るかと思われる。