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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
祖父が、習慣に背いて、自分を父の手に渡してくれなかった理由、下心が、賤しく考えられた。スーラーブは、眉を顰(ひそ)めて、目の下に見える、堅固な城の外廓と、二重の城門とを瞰下した。それ等は皆、祖父の代に、改築されたものであった。祖父は、あの厚い城壁と、要心のよい二重の扉で自分をこの中にとり籠めて置く積りだったのだろうか、または、小さな威厳という玩具を与えて、自分を一生、サアンガンの嬰児にして置こうとしたのだろうか。
十二
母が遂に、父の名を明かしたのは勿論、それを聞いたら自分が落付き、現在の生活に一層満足するだろうと思ってのことであるのは、スーラーブによくわかった。父との短い、思い出の深いだろう恋を考えれば、その心持にも同情されるものがある。
然し、気の毒なことに、彼はもう自分が、彼女一人の、スーラーブではなくなったことを感じた。寧ろ女らしい姑息さで、自分を動く、大きな運命の輪から引きはなしてくれたことで、却って、自分の本性というものからは遠い、無縁なものであることが明らかになったような形さえある。
考えれば、祖父は勿論、母も、彼等自身の満足の方便として、自分を自由にした。