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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

心を合せ、彼一人に信頼し、これ等の活動をしている者等を見ると、スーラーブは、しんから謙遜に、自分の計画の成就を祈らずにいられなかった。彼は、自分も彼等も等しく大きな運命の扉を開くためにせっせと準備し、用意しているように感じた。彼が、初めてイランに侵入する決心をした晩、空想のうちに、幻と思えないまざまざと浮んだ父の姿は、一層はっきり彼の心にやきつき、守本尊となった。この広場の大ごたごたの上にも巨人のような父の姿が、透明な積雲のように、而も溢れる精神に漲って、凝っと自分の計画に注目しているように思うのであった。

六月の下旬、スーラーブは、予定通りイランに向って出発した。彼の、厚い鉄の胸当の下には圧搾され、やっと縮んでいる限りない希望と、母から借りて来た、あの銀台に土耳古玉をつけた頸飾りが大切に蔵われていた。ターミナはこの菱形の碧い珠に、幾夜かの涙と祈りとをこめて別れを告げるスーラーブの頸にかけた。彼女は、今度の計画が成功すれば、必ずルスタムとスーラーブの名に於て、迎えを寄来す。使が、再びその頸飾を白檀のはこに入れて持って来れば、信じてその者に案内を任せるようにと云う、スーラーブの言葉を唯一の希望に老いたシャラフシャーと、人気のない城を守ることになったのである。