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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
寂寥さを身辺に感じた。それは、城中に、対等で話せる男性が一人もいないということであった。いる者は、幾人在っても皆臣下で、彼の言葉は余り絶対に肯(う)けられすぎた。ああしたいこうしたいという暢やかな心にふと浮んだ思いつきも、一言唇の外に出ると、すぐ命令として受けとられ、立ちどころに、ゆとりのない完全さで遂行されてしまう。ルスタムには、それがつまらなかった。内房は、いうに及ばぬ。彼が、余り屡々(しばしば)、また余り長い間音信も出来ない征旅についていた故か、三人の妻妾等は互の間に姉妹より睦しい情誼を結んだ代り、ルスタムとは、君臣の関係が溶けきれずに遺った。その上、彼は、どの女性によっても子供を得なかった。そのために内房は、限りなくだんだんに日がかげって行く処のような感じを持たせた。ルスタムは、黙ってはいたが、自分に唯一人の男児さえないということが、家庭にある自分の総ての寂しさの原因だと知っていたのであった。
黒人娘の芸を観ていたうちにも、ルスタムは心の底で、独言した。「狡い男め、貴様が何を待っているか、儂には判っているぞ。儂の情慾で一儲けしたいのだろうが、それにはちと年寄のところへ来すぎたらしいぞ」