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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

皮肉な諧謔の裏に、彼だけの知る余韻の長い哀しさがあった。それだから、ギーウの来たのはルスタムにとって、暖い、男らしい太陽の光が胸に流れとおったような快よさなのであった。彼は、ギーウに酒を注いでやりながら、家族の安否、首都の模様などを尋(き)いた。ギーウは、軽い冗談を交えてそれに答え、じろじろ黒人の芸人娘の方を視た。

「彼等はイラン語がわかるのか?」ルスタムがその方を見ると、芸をやめて一処にかたまり時々振り向いては眼の隅から新来の客の様子を窺っていた娘達が、一斉に黒い顔に真白な歯を現わしてにっと彼に笑かけた。ルスタムは見ない振で盃をとった。

「エチオピアの方から来たのだそうだから、解るまいとは思うが――どけるか?」

ギーウは、一人混っている中年の創傷あとのある男の顔を特に疑わしそうに見た。

「あっちにやろう。何も今ここに置く必要はない」ルスタムは、広間の隅にいる侍僕を呼んだ。男は命令を受け、二言三言芸人娘等に何か云った。彼等は、礼もせず騒々しい様子で広間を出て行った。

「それで先ずよい」

ギーウは、くつろぎながらも、居住居をなおした。そして、低い声で云った。