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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

若しや、万一、その若者というのは自分の息子ではあるまいか。ルスタムは、我知らず髭をかみ、つきつめた顔をした。若しやそれが自分のたった一人この世に持った息子だというのでないだろうな。ルスタムは、ギーウが怪しんだほどゆるがせにならぬ調子で追窮した。

「何処の者か聴かなかったろうな」

「――わからぬ。が、いずれ高の知れた者だ」

ギーウは、要点に立戻るために語調を更えた。

「然しとにかく悪戯をさせておけぬから、一刻も速く定りをつけなければなるまいが――卿は何時出発して貰えよう。儂は至急戻って復命し、準備をする」

「――さて、――」

ルスタムは、凝っと広間の一隅に目をこらし、深く思い入った風で呟いた。

彼はギーウに向ってよりも寧ろ自分自身の心に対してこの一言を呟いたのであった。思いがけずきいた若者のこと。つれて心に湧いた疑問は、ルスタムにとっても意外なものであった。まるで今の今まで忘れきっていた古いことが急に活々と心の表面に浮び上って来るや否や、もう紛らされたり、除かせられたりしない根強さで、考えの中心勢力となってしまった。而も、それが理窟で判断すれば、不合理なものであるのをルスタムは知っていた。