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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

それは、若者の顔を見ることさえ出来たら、そして、そこに何か血縁の類似がありさえしたら、きっと逆に母親の顔も忽ち思い出せよう、それで両方一度に明かになるという考えであった。ルスタムは、天幕に顔をつけ、息を殺し、賤しい奴僕のような態度で内部を覗いた刹那、何か頼りない衝動を感じた。彼が、当にならないことと思いながら当にしたものは、若者の顔から射出していなかった。何も彼の直覚を一握りで捕えるようなものはない。ただ雄々しそうな、育ちのよさそうな、一人の若者の容姿が、静かに順々に、彼の切な瞳に映って来るばかりだ。

ルスタムは、暫く瞠(みつ)めた後、またそっと上体を地面に倒した。頬杖をついて眠っている一人の兵が、寝がえりを打ってルスタムの脇腹に触れた。ルスタムは、じっと考えながら、少し体をずりよけた。あの若者の細面てなところが、何処か、あの女と似てはいないだろうか? いやいや、一体にツラン人は面長だ。この若者に限ったことはない。然し、牽きよせられるように、ルスタムはまた膝で起き上った。そして、眼をすりつけるようにして、内を覗いた。彼にはどうしても、一度視た限りで思いきれない心があった。