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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
こうやって若者の顔を目前に見れば、彼が、あかの他人であることは疑う余地なくわかるのに目先が離れると、未練な妄想が再び起って来る。ルスタムは、自分に対して腹立たしい気持にさえなって来た。こんな馬鹿らしい、不様な真似をしたことなどは、ギーウにも話せたものではない。心に呟きつつ、またまた彼は、殆ど無意識にのび上って、塵臭い、がばがばした革天幕に皺深い顔をすりよせる。
三四度それを繰返し、ルスタムは、がっかり地面に突伏した。張合のない、詰らない気がしみじみとした、かさりとするのさえ懶いようだ。――天幕の裾から流れる光が、ルスタムの目の前の地面に漂い、疎らな草の細い葉や小枝の切れはしや、死んで乾いた小虫の殼などを浮出させている。
一寸の間ぼんやりそれ等に目を停めていたルスタムは、やがて、意志の目醒に刺戟されたように、きっとして自分の周囲を見廻した。
いつ迄こうしてはいられない。まだイランの陣まで安全に帰らなければならないという一仕事がある。最後の注意をルスタムは天幕の裡に向けた。もう眠ろうというのだろう。人が動く跫音が――、何か云い、圧しつけたように、「フフフフフフ」