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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
右翼の端にバーマンが、凝っと正面を見て、あし毛の馬に騎っていた。彼はスーラーブを認めると、顔付もかえず、義務的な風でちょっと右手を挙げた。用意はよろしいというのだ。スーラーブは、元の場所に戻った。イラン方でも仕舞いのざわめきが鎮まった。何ともいえない静けさが張り切った。太陽は一息つき、一きわきららかに両軍の頭上に照り渡った。――
すると、ツラン勢の後方から、心臓をつき上げるように、一打ち、強い羯鼓の音がした。続いて、二打ち、三打ち、四打ちめの羯鼓に合わせ、ツラン軍は足を踏み轟かせ、裂けるような鬨(とき)の声をあげた。空気の顫えが鎮まらないのに、イラン軍で、熱いような太鼓を打ち出した。急調に、じっとしていられないように、全軍が鯨波をあげた。蒼白い、神経質な表情を湛えていたスーラーブの顔に、燃えるような輝きが出た。彼は鋭く眼を配り、左右を見ると、手綱をかい出し、とっとっとっと、一騎で、両軍の中央に騎り出した。亢奮が感染し、乗馬は、敏感に鼻翼を震わせては、深い息をする。スーラーブは、轟きの余波の消えるのを待って、高く、馬を前脚で跳上らせた。彼は、鉾を右手に振かざし、大きな輪乗りで敵の前面を騎り廻した。