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こずのしんじうべきていど

古図の信じ得可き程度

木暮 理太郎

「山岳」1923(大正12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,637 字 · 8 页

青空文庫

。今仮にツウラ沼と菅沼とが時を異にして同一の湖に与えられたる別名なりとし、前者は早くより廃れて後者之に代りたるも、明治十年頃に至りて漸く地図に採録されたりとすれば、其間に出版されたる絵図は依然としてツウラ沼なる名称を存するを以て、菅沼を取り扱う場合には人を誤るものという可く、従って信用の程度は減ず可き也。幸にして其誤りや単に山中の一湖沼のみにして止まらば、即ち白璧の微瑕にして殆ど其価値を損することあらざる可きも、斯る場合は寧ろ稀有の事に属す。

此湖に関して余の知れる最も古き記録は『正保図』にして、同図の尾瀬沼(さかひ沼とあり)よりは稍や小なる一湖を描き、其中に変体仮名にて徒婦良能沼(或は徒婦羅沼とも読み得ざるに非ず、余の見たるものは複製なるを以て、原本につかざる以上、良能と羅との仮名を正しく区別し難し)と書せり。即ちツフラノ沼なり。而して其後に出版されたる『上野図』を見るに、尽く『正保図』を基として、之を縮少して発行したるものなりというを得可く、且『正保図』の如きは何人も容易に手にするを得可き性質のものにあらざれば、一たび『正保図』を基としたる絵図の刊行さるるや、他は其名称の如何を問わず之を模刻したるものなること疑なく、一図の誤は必ず他図にありても常に之を繰返し、加之ならず必然の結果として誤読と誤写とは