轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こぼく

古木

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,648 字 · 24 页

青空文庫

終戦後、柴田巳之助は公職を去り、自宅に籠りがちな日々を送りました。隙に任せ、大政翼賛会を中心とした戦時中の記録を綴りかけましたが、それも物憂くて、筆は渋りがちでありました。一方、時勢を静観してみましたが、大きな転廻が感ぜられるだけで、将来の見通しは一向につきませんでした。そして索莫たる月日を過すうち、病気に罹りました。

初めは、ちょっとした感冒だと思われましたが、やがて不規則な高熱が続き、それが少し鎮まる頃には、心臓の作用が常態を失していましたし、かねての糖尿病も悪化していました。医者は首を傾げました。

鉤の手に建てられた家屋の、一番奥の室から、廊下を距てて、床高に作られた書院が、病間でありました。

気分がよく天気もよい時、柴田巳之助は、障子を開け放させ、縁側の硝子戸ごしに、外を眺めました。ともすると、縁側近くに布団を移させることもありました。

室の二方を取り廻した縁側の、その一方から、広い庭の片隅にある椎の大木が見えました。

眼通り四抱えほどもあるその大木は、樹齢幾百年とも知れず、この辺一帯が藪の茂みであった昔から、亭々と聳え立っていたことでありましょう。