轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ねむのきのかげ

合歓木の蔭

山本 周五郎

「新読物」交友社 、1948(昭和23)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,740 字 · 27 页

青空文庫

五

良人に対しても同じようであった、長く知り合っていたので遠慮はないけれども、これが身も心もささげる生涯の良人だという感じがぴったりと身につかない。つい「岩田さま」と呼びそうになって驚くことが多かった。――約束の合歓木も庭の西の端に植えられた、椙原の庭のよりも大きい樹で、枝も充分に張り、花が咲いたらどんなにみごとかと想像された。根づいたことがはっきりすると、半三郎は楽しそうにその樹蔭へ茶を運ばせたりした。

「来年はあぶないが再来年は咲くそうだ」彼は奈尾にこう云った、「そうしたらひとつ趣向を凝らして夜宴をするかね」

しかし奈尾はまったく別のことを考えていた。

五

あすの晩もういちど、――そういわれた夜は雨であった、そのうえ嫁入りじたくのことでばあやにおそくまでつかまり、とうとう庭へ出ることが出来なかった。岩田へ来てからはあわただしい日が続いて、夏のうちはふと思いだす程度であったが、秋風の立つころになって生活もおちつき、根づいた合歓木の葉が哀しく枯れだすのを見ると、しばしばあの夜のささやきの声が思いだされ、あやしく胸のときめく時間がかえって来た。

――あの夜あの方はひと晩じゅう雨にぬれて立っていらしったに違いない、そうだ、その次の夜もその次の夜も、きっと……。