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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

然りといえども、彼は横井小楠の如く直覚的の活眼を有せず、佐久間象山の如く推歩打算的経綸を有せず、また藤田東湖の如く時勢の潮汐を察して、一世の人心を籠絡する大権数を有せずといえども、また決して無謀の攘夷家に非ず。ただ攘夷を口実としてその野心を逞うせんとする浮浪に非ず。彼が攘夷は敵愾心の凝結したるものにして、その立意誠実にして、また一種の経綸ありしや、また決して疑を容れず。

彼は神奈川条約調印の後においては、最早主戦論を擲てり。その安政二年三月月性に与えたる書中の一節に、「魯墨講和一定す、決然として我よりこれを破り信を夷狄に失うべからず、但し章程を厳にし、信義を厚うし、その間を以て国力を養い、取り易き朝鮮、満洲、支那を切随え、交易にて魯墨に失う所は、また土地にて鮮満にて償うべし」と。また同年四月、来原良蔵に与うる書中にもいえり、「癸丑、甲寅は一大機会なりしに、乃ち坐してこれを失う。然れども事已に往けり。今の計を為さんには、和親して以て二虜を制し、間に乗じて国を富まし兵を強くし、蝦夷を墾き満洲を奪い、朝鮮を来たし南地を並せ、然るのち米を拉ぎ欧を折かば、則ち事克たざるは無し。