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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
彼の島津斉彬の如きはその首領にして、幕士中における勝安芳の如き、もしくは長州における長井雅楽の如き、もしくは横井小楠、佐久間象山の如きも、その実際的経綸は、ほぼこれと同一なりしやを想見せずんばあらず。彼の大久保利通の如きも、当初はこれに相違なかりしといえども、長州再征の時に到り、幕政のいよいよ以て援くべからざるを看破したるがために、遂に倒幕に変じたるが如きを見るなり。彼の島津三郎、松平春岳の如きは、固よりこの中に指を屈せらるべき者なり。その薩摩が討幕の密勅を奉ずるに至りたるが如きは、これ西郷、大久保の意にして、三郎の意に非ざるやまた疑うを須いず。
概して言えば、当時においては先ずこの三個の意見並立し、而して彼の嘉永、安政以後二十余年間の歴史は、この三個の意見の交互消長の記録というも不可なきが如し。もしあるいは因循姑息、迂僻固陋、放誕謬戻の意見を以て、あるいは幕府のためにし、あるいは朝廷のためにし、もしくは風潮を視、夕に変じ、朝に換わるが如き雷同附和者流に至っては、挙げて数うるに足らず。然れどもかくの如き者は、全局の方向を決するにおいて、何の力も無き者なれば、数えざるもまた差支なきなり。