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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

彼は到底一の「殉」字を会得したるもの、而して彼は到底一の殉字に慚じざるもの、略言すれば彼は天成の好男児なり、日本男児の好標本なり。

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余嘗て維新革命前の故老を訪い、以て彼が風を聴くを得たり。いう、彼れ短躯骨、枯皮瘠肉、衣に勝えざるが如く、嘗て宮部鼎蔵と相伴い、東北行を為すや、しばしば茶店の老婆のために、誤って賈客視せらる。宮部戯れて曰く、「君何ぞそれ商骨に饒む、一にここに到る」と。彼れ然刀柄を擬して曰く、「何ぞ我を侮辱するや」と。彼れ白痘満顔、広額尖頤、双眉上に釣り、両頬下に殺ぐ、鼻梁隆起、口角緊束、細目深瞳、ただ眼晴烱々、火把の如きを見るのみ。彼れ人に対して真率、漫に辺幅を飾らず、然れども広人稠坐の裡、自ら一種の正気、人を圧するものありしという。

彼れ居常他の嗜好なし、酒を飲まず、烟を吹かず、その烟を吹かざるは、彼が断管吟の詩に徴して知るべし。書画、文房、骨董、武器、一として彼の愛を経るものなし。衣服、玩好、遊戯、一も彼の嗜を惹くものなし。机上一硯、一筆、蕭然たる書生のみ。最も読書を好み手に巻を釈てず、その抄録したるもの四十余巻ありという。