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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
彼は倹約令を布くのみならず、倹約の敵たる淫蕩奢侈の風俗を矯正せんと欲せり。彼は男娼を禁ぜり、彼は隠売淫を禁ぜり、彼は各売淫所を撤して、これを市外の一所に遷せり。彼は市中に散在する劇場を移して、これをその片隅に集めたり。彼は鄙猥なる戯作本を禁じて、その著作者を罪せり。彼はドラコの酷腕を以て、ライコルガスの理想を実行せんと欲せり。彼は何故にかくの如きことをなせしや。彼は自から曰く、「宿※の胸腹に凝滞仕り、一円快愈の兆これ無きの姿に付き、一旦烏頭、大黄の激剤相施し申さず候えば、迚も功験得難く候」と。当時の社会は、果してかくの如く宿※に取り附かれたるか、曰く、然り。
諸侯は何事をなせしか。
今の諸侯に財足れるものなし。昇平百年にして奢侈習となり、費用古に十倍せり。窮せざることを欲すとも得べからず。終には大坂の商賈鴻の池、加島屋、辰巳屋などいえるものどもに借財して一時の乏しきを救うといえども、またその利息返償に一層の苦を増し、終に窮迫、せんかた尽きて、家中の禄をかりあげ、紙金の通用鋳銭などにて欠を補うに至る。その策尤も拙く、銭多ければ賤しく、紙金を造れば他邦に通ぜず、正金出でて再び帰らず。