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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

知らず、殉難殉国の烈士、松陰の如きもの、如何にしてこの地に生じたる。

怪しむなかれ、この中また一個の先進者ありしを。その人を誰となす、村田清風なり。

村田清風の長州における、なお嶋津斉彬の薩摩におけるが如し。これは藩主にして、彼は世臣の相違はあれども、薩長二藩の関原以来蓄積したる活力を擢揮し、大勢の趨向を指点し、時艱を済うの人物を鼓動したるは、実に二人先導の功に帰せざるを得ず。

彼れ十七歳の時江戸に来るや、富士を詠じていわく、

来て見れば聞くより低し富士の山

釈迦も孔子もかくやあるらん

舜何人ぞ我何人ぞとの気象、この短句に鬱勃たるを見るべし。その花見の歌にいわく、

西北に風よけをして幔を張れ

我が日本の桜見る人

その眼識の国防上に及びたるを知るに足らん。またいわく、

敷島の大和心を人とわば

蒙古のつかい斬りし時宗

攘夷家の口吻を免れずといえども、その直截痛快なる、懦夫をして起たしむるにあらずや。述懐の詩にいわく、

高千穂の峰に神戟有り、即ちこれ億兆の日本魂、

武内・時宗この器を持ち、築成す六十六州の藩。

起承は則ち尊王なり。転結は則ち攘夷なり、尊王攘夷の大精神は、実にこの人の活ける名号なり。