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どうほう
同胞
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页
そして、客は皆大人ばかりだったし、女の人も二人いたし、何やかの都合から、母が接待役の格で居残ることになって、恒夫は祖母の伴をして帰って来た。
恒夫としては我儘から出たそのことが、祖母にとっては非常に嬉しかったものらしい。打晴れた初春のぽっかりした暖みなのに、祖母は炬燵をいれさして、恒夫にもそれにあたらせたがった。そして恒夫がお義理半分に、足先だけを炬燵布団の中に差入れて、畳の上に腹匐いながら、雑誌の小説を拾い読みしてるのを、しみじみとした眼付で見守って、述懐めいたことを話しかけた。然し恒夫は、祖母の言葉に興味を覚えなかった。祖母が父の十三回忌にめぐり会おうと、昔のことを考えると夢のような気がしようと、そうして生きてるのが有難いことだろうと、そんなことはどうでもよいのだった。
「何時になるでしょうね。」と祖母は尋ねかけた。
恒夫には何時だって構わなかった。
「お母さん達ももうじきでしょうよ。」
その言葉の語気に、恒夫は祖母が自分を憐れんでることを感じた。と同時に、自分のうちにも祖母を憐れむ情があることに気付いた。何だか喫驚して眼をくるくるさして、頭をねじ向けて見ると、祖母の眼がいつもより多く濡みを帯びてるようだった。