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なごやのこさかいふぼくし
名古屋の小酒井不木氏
国枝 史郎
「新青年」1929(昭和4)年6月増大号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,452 字 · 5 页
れる人――そういう人であったからであろう。
一晩の中に三ヶ所の会合へ列席したことさえあった。
「そう出歩いたり来訪者ぜめにされて、何時原稿を書くのです?」と一度私は訊いたことがあった。すると氏は、
「夜中です」と答えた。
「その病気で、夜中などに原稿を書いてよいのですか?」
「何時書いても同じです」
「睡眠不足になりませんか?」
「眠りは昼でも取れます」
「しかし昼間の眠は浅くて不為めだということですが?」
「そんなことは有りません。そんなことを思って無理にも夜間眠ろうとすると却って睡眠不足になります」
氏はあの病体で徹夜さえした。
氏が客を好み、談話を好む好一例を私自身経験した。
一夜私は氏の家を訪うた。と、すぐ書斎へ通された。折柄氏は夕飯中であったが直ぐ書斎へ出て来られ、
「飯を食っている暇も惜しい、私は此処で食べます」とこう云って、女中をして飯と菜とを持って来させ、一方私と話し乍ら、他方飯を頬張られた。
この調子である。客が集まり、客に呼ばれるのは当然と云えよう。
氏の何より嫌ったのは、偽善家、氏の好意と寛大とにつけ込んであくどく利益を貪ろうとする人物、気障な人間嘘吐き等であった。