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『ゆいけんニュース』

『唯研ニュース』

戸坂 潤

「唯研ニュース」1933(昭和8)年11月20日号~1938(昭和13)年2月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,567 字 · 35 页

青空文庫

新潟版にはI氏と私とがその日新潟で講演会を開くという記事が載っているのである。私は元法政大学教授として、I氏は新進の評論家として、紹介されている。もう一つの新聞の方には吾々両名が佐渡の夏期大学で講義を終えてその帰りに新潟で大講演会をやるように書いてあるのである。

佐渡の夏期大学云々というのは全くウソで、所謂大佐渡のシベリヤ寄りの海岸線を彷徨したり、偶然来合わせた一組の女学生上り達と一緒に「おけさ」を見たり御馳走にあずかったり(尤も一夕座談会はやったが)しただけだったが、何にせよ之は大変なことになったと思ったのである。それとなく見ているとI氏もどうやら次第に不安になるらしい。

尤も断髪のI氏夫人だけは屈託なさそうに、桟橋の上をのぞき込みながら、ハンケチを振っているのである。

佐渡へ渡る前に新潟を通った時、沼垂あたりから見える信濃川の河港や工場地帯や、新潟駅から万代橋を渡るモダーン植民地風の風景は、新潟を張り切った小都会のように見せたのだが、それが今度帰りに新潟に上陸して見ると全く憂鬱な街に見え出したのは意外だ。古町通りを一通り歩いて見たけれども、どうも何かしら楽しまない。