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けいもうのげんだいてきいみとやくわりとについて

啓蒙の現代的意味と役割とについて

戸坂 潤

「饗宴」1931(昭和6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,857 字 · 17 页

青空文庫

――ここで見られるのは、啓蒙活動の対象は専ら文化人(プブリクム)だけであるべきであって、啓蒙の対大衆的活動はあまり意味のないものとさえなって了いそうだということである。之では啓蒙とは要するに国家による教育という類のものと大して変ったものではなくなり、政治的変革の一つの動力としての意義は完全に見失われる。事実カントなどは、啓蒙活動に於いては、全く封建プロシャ的にも、「啓蒙君主」の恩恵に最後の望みをかけているのだ。そこには民衆による「政治」の観念がない。

なる程、フランスのアンシクペディスト達は大部分政治的活動分子ではなかった。当時はまだその時期でなかったからだ。だが彼等の企てた処は、啓蒙君主の恩恵などをあてにしたカント的啓蒙活動でなかったことだけは確実である。彼等の啓蒙は市民の政治的進出の兵器工廠の一つに他ならなかったのだ。これが啓蒙なるものの当時の生きた本質であり、そして今日でも生きているべきである本質だが、処がドイツ哲学によると、啓蒙の概念はそういう本質とは何の関係もないものとなって了っている。で之は啓蒙という歴史的事実を忠実に云い表わす妥当な概念ではなかったと云わざるを得まい。