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ぜんあくりょうめんねずみこぞう

善悪両面鼠小僧

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,231 字 · 21 页

青空文庫

だな。――なアんと云われねえものでもねえ。……が、云う奴は云うがいいや。そんな奴とは交際しねえばかりよ。そういう奴に見せてやりてえくらいだ。お美しくて威があって、お愛嬌があって上品と来てはこれぞ女の最上なるものを。クレオパトラだって適うめえ。ましてその辺のチョンチョン格子、安女郎ばっかり買っている奴には這般の消息の解るはずがねえ。……何しろ俺らも驚いたね、いつものデンで忍び込んだ所が場所もあろうに姫君のお寝間、ひょいと覗くと屏風越しに寝乱れ姿が見えたと思え。寝白粉というやつさね。クッキリと白い頸からかけて半分お乳が見えるまで寝巻から抜いだ玉のような肌。まずブルッと身顫いしたね。丹花の唇っていう奴をほんの僅かほころばせてよ、チラリと見せた上下の前歯、寝息さえ香ろうというものさ。で、思わず茫然としていつまでも屏風越しに覗いているとポッカリと眼をお開きなされたがにわかに夜具を刎ね上げたのでハテなと思うと声を掛けられた。

「曲者!」という凜とした声。

「掛けると同時にヒラリと起き長押の薙刀をお取りになったがいやどうもその素早いことは、武芸の嗜みも想われて急にこっちは恐くなり何にも取らずにバタバタと逃げ、かくの通りに松の木の上で、ブルブル顫えておいでなさらア。