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ぜんあくりょうめんねずみこぞう

善悪両面鼠小僧

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,231 字 · 21 页

青空文庫

お鉢叩きに椀廻し、いよいよ窮すると相撲を取る。越後の角兵衛逆蜻蛉、権兵衛が種蒔きゃ烏がほじくる、オヤほんとにどうしたね、お前待ち待ち蚊帳の外、十四の時から通わせていまさら厭とは胴欲な、……などと大変な騒ぎになった。笑声、歓語、泣き出す奴もある。――こいつヒステリーに相違ない。

「エッサッサ、エッサッサ」

泥鰌掬いが始まった。

姫は余りの可笑しさに、座にもいられず供一人連れ、小袖幕をヒラリと刎ね、囲いから外へ忍び出た。

「お菊や、どっちへ行って見ようね」

供の腰元を振り返る。

「はい、お姫様のよろしい方へ」

「静かな方へ行って見たいね。あまり笑って苦しくなったよ」

云いながらブラブラ遣って来たのは今日も寂しい鶯谷の方で、ここまで来ると人気はなく充分花も見ることが出来る。

「ああ好いこと」と云いながら二人は切株に腰を下ろし、咲きも終わらず散りも始めぬ、見頃の桜に見取れていた。

と、そこへバラバラと五六人の人影が現われた。一見して市井の無頼漢、刺青だらけの兄イ連、しかも酒に酔っている。

「オオオオこいつア見遁せねえなあ! どうでえどうでえこの美婦は!」

一人が云うとその尾に付き、