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ラマのゆくえ
喇嘛の行衛
国枝 史郎
「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,238 字 · 21 页
「ナニ逃亡者? 逃亡者ですと?」
長老は驚いたというように歯の無い口を大きく開けて、顔一杯を皺にしたが、やがて真面目の表情にかえり、
「喇嘛王宮の女官の中には左様な馬鹿者は居りません。西蔵に産れた女子共は王宮の女官に用いられることを畢世の願望といたして居ります」
「成程――」とホートンは気の無い声で矢張り憂鬱に斯う云って、復も長い間考えていたが、
「その沢山の女官のうち最近民間から選び出されて任官されたものはございますまいか?」
「最近女官になったもの?――考えて見ることに致しましょう」
長老はものものしい様子をして胸の辺へ両手を組み合わせて暫く考えに沈んでいた。それから重々しく云い出した。
「いかにも一人ございます。名は琅玉と申しまして印度の北端レイ市の産れで十六歳の美しい娘でござる」
「何時宮中へは這入られました?」
「今から三月ほど以前でござる」
「宮中に於けるお役目は?」
「御衣を扱うお役目でござる」
ホートンの顔はこれを聞くと急に活気を帯びて来た。彼は元気よく云うのであった。
「琅玉とか申すその女官をこの室へお呼び入れ下さいますよう」
すると長老は眉を顰め「飛んでもないことだ」