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もふく

喪服

久生 十蘭

「文學界」1957(昭和32)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,793 字 · 24 页

青空文庫

浜口 真面目なときには真面目な話かたをするもんだ。

静江 だから、昨夜はちょうどそんな状況だったといってるのよ。身を投げるにしても、愛人の眼の前でやったら、これ以上、効果的なことはないわね……美紗さん、成功したのよ。大満足でしょう……ひとりでニヤニヤしているかもしれないわ。

浜口 馬鹿もいい加減にしろ。(食卓の上にナプキンを投げだす)美紗はどこにいる?

静江 部屋にいるでしょう。

浜口 (かつに)美紗に、おれが呼んでいるといいなさい。

かつ かしこまりました。

静江 (コオフィを注ぐ)またお肥りになったようね。ゴルフでもおはじめになったら?

浜口 だめだね、あんなものは。実益がないから……それよりボクシングでもやろうかと考えているところだ。嫌な奴の頭を、性のつくほど張りつけてみたいものだと思ってね。

静江 嫌な奴って、あたしのことなんですか?

浜口 誰だろうとさ。

間

かつ、戻ってくる。

かつ 頭痛がなさいますそうで……

浜口 なにをしていた?

かつ (チラと静江のほうを見る)さあ……

浜口 さあ、とはどういうことだ……まあいい、退っていなさい。

かつ (退場)

浜口 立派なやつだ。