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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

で、まず忠左衛門から口を切って、小平太が今日吉良邸へ入りこむようになった次第を紹介した。その尾について小平太も、自分が見てきた邸内の様子を落ちなく報告に及んだ。内蔵助は眼を瞑ったまま、じっとそれに聴き入っていたが、やがて相手の言葉が途切れるのを待って、

「ふむ、そう分ってみれば、もはや遅疑する場合ではないな」と、ぽっつり口を開いた。

「さよう!」と、忠左衛門はすぐにそれに応じた。「六日の茶会を外したら、悔いて及ばぬことにもなりましょう。それがすめば、さっそく白金の上杉家の別邸へ引移られるはずだと、たしかな筋から聞き及んでもいますからな」

「それもある」と言ったまま、内蔵助はまたしばらく眼を瞑っていた。が、ふたたび口を開いた時は、持前の低声ではあるが、いつになく底力が籠っていた。「で、いよいよそれと決定すれば、あらためて一同にも通告するが、面々においてもその心得で、それぞれその用意をして待っているように伝えてもらいたい。それにしても、小平太、今日は御苦労であったな。内蔵助からも厚く礼を言うぞ」

「は、ありがとう存じます」と、小平太は畳に手を突いたまま、きゅうに眼の中が熱くなるような気がした。