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しじゅうねんまえのふくろだのたき
四十年前の袋田の瀑
木暮 理太郎
「旅」1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,049 字 · 8 页
贅沢で有名な温泉場はさて措き、設備の完全すら期し難い山の奥の温泉などで、高う見積ってもせいぜい二円位が適当であると思われる宿料に、三円以上も払わせられる。そういう苦い経験を幾度か嘗めさせられた。この弊風は将来ますます助長されるであろうと思うとうんざりする。何がそう宿料を高くさせるかといえば、大抵はお膳のまわりに後から後からとならべられる無用の皿数、オムレツ、カツレツ、ビフテキ等々、見るからに食慾を唆るべく余りに偉大なる代物である。季節にふさわしい新鮮な土地の産物をあっさり料理したものの方が都会人に喜ばれることを知らぬ筈はないのに。これも世相とあれば、旅行などはせぬことか。
袋田の泊り賃も其時は二十銭であったが、今頃はさぞ変っていることであろう。そら恐ろしさに二度と行く気は起らない。再び瀑の壮観に接したい希望は胸に抱きながら。(昭和一一、一二『旅』)