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としょかん

図書館

宮本 百合子

「文芸」1947(昭和22)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,707 字 · 14 页

青空文庫

女の友情と云えば、たよりないものであったのも、つまりは婦人が社会人として無力であったからであった。経済的能力もないし、はっきりした職業の上の立場もないし、友達にたよられれば共にゆらつく生存の足場しかもたなかった。女子の専門学校や大学の学校仲間というものも、これまでのように、親の資力の大さでそこの生活が保障されて来た娘たちの集り場所であっては、結局、生活の問題までをわかち合う仲間としての友情は生じにくかった。

もうこれからは、どこの図書館でも、婦人閲覧室というものは無くなってゆくだろう。云ってみれば、社会の全面から、そういう差別を無くしたい気持に燃えている、女の人たちの集りが、最後の婦人閲覧室から生れたことは面白く思われる。

この頃の上野の山はこわい東京の中でもこわいところの一つとなった。初冬の落日は早くて、五時すぎると上野の森に夕靄がかかりはじめた。西空にうすら明りはあるのに、もう美術学校の黄櫨の梢は、紅を闇に沈めてただ濃く黒いかげと見えるばかりである。婦人閲覧人たちは、殆どみんなこの時刻に帰り仕度をはじめた。わたしも、ふろしき包から下駄を出して、正面の段々をのぼり切ったところで穿きかえた。