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としょかん
図書館
宮本 百合子
「文芸」1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,707 字 · 14 页
やっぱり柵の間を通るようになっていて、そこにテーブルをひかえてこちら向きに受付がいる。そこで閲覧料を十銭だせ、と書いてある。十銭ですか、特別も? 黒い毛ジュスの事務服を着た中爺さんは、首だけで合点して、そう、と答えた。この役人風な調子も、やはり上野風である。戦争でやけてしまわなかった図書館をよろこんで珍しく眺め直すこころもちには、役人くささも、相変らずとほほえまれた。
二階へ上ると、おどり場に台と腰かけがおいてあって、喫煙室と書いたしるしが立てられている。そこで外套をきた若い男が二人、てんでにちがった方角を見ながら煙草をふかしていた。三階の書籍かり出しのところとカタログ室とは、もとからここにこうしてあっただろうか、いかにも埃っぽくて奥が深く暗い書庫に向って、裁判所めいた高い卓があるところは、見馴れたここの光景だが、カタログ室の方が妙にガランとしている。書籍かり出しに、相変らず時間がかかると見えて、いつからそうなったのか、皮ばりの大長椅子が二列、三かわほど置かれ、そこにすき間なく閲覧者がかけて待っている。それは病院のような、役所のような燻んだ雰囲気である。