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こっきょう

国境

黒島 伝治

「戦旗」1931(昭和6)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,336 字 · 21 页

青空文庫

そこで、漁業会社は、普通相場の五分の一にあたる安いルーブル紙幣を借区料としてサヴエート同盟へ納めるのだった。そして、ぬくらんと懐を肥やして、威張っていた。

密輸入者の背後には、その商品を提供する哈爾賓のブルジョアが控えているばかりではなかった。資本主義××が控えていた。

どうすれば、こういう側面からのサヴエート攻撃の根を断つことができるか!

呉清輝は、警戒兵も居眠りを始める夜明け前の一と時を見計って郭進才と橇を引きだした。橇は、踏みつけられた雪に滑桁を軋らして、出かけて行った。

風も眠っていた。寒気はいっそうひどかった。鼻孔に吸いこまれる凍った空気は、寒いという感覚を通り越して痛かった。

十五分ばかりして、橇はひっかえしてきた。

呉は、左の腕を捩じ曲げるように、顎の下に、も一方の手で抱き上げ、額にいっぱい小皺をよせてはいってきた。

「早や行ってきたのかい?」

腰の傷の疼痛で眠れない田川は、水を飲ましてもらいたいと思いながら声をかけた。

「火酒は残っていねえか? チッ! 俺れもやられた!」

「やっぱし、あしこのところからはいろうとしたのか?」

「いや、ずっと上へ廻ったんだ。