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こっきょう
国境
黒島 伝治
「戦旗」1931(昭和6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,336 字 · 21 页
ところが、彼れらは、金を取るためではなく、自分たちの生活を築きあげるために働いている。他人のために働いているんではなく、自分のために働いているんだ!
むつまじげに労働学生が本をかかえて歩いている。それだけが、もう、彼をすばらしく引きつけるのだった。
夜になると、怪我をしない郭と、若いボーイが扉のかげで立話をした。倉庫の鍵を外套から氷の上へガチャッと落した。やがて、橇に積んだボール紙の箱を乾草で蔽いかくし、馬に鞭打って河のかなたへ出かけて行った。
「あいつ、とうとう行っちゃったぞ!」
呉清輝は、田川の耳もとへよってきて囁いた。
「どうしてそれが分るかい!」
「どうしても、こうしてもねえ。あいつだってばかじゃねえからな」
呉清輝は、腹からおかしく、快よいもののようにヒヒヒと笑った。
翌朝、おやじが、あたふたと、郭を探しにはいってきた。郭の所有物を調べた。ズックの袋も、破れ靴も、夏の帽子も何一つ残っていなかった。
「くそッ! 畜生! 百円がところ品物を持ち逃げしやがった!」おやじは口をとがらしていた。
呉清輝と田川とはおやじが扉の外に見えなくなると、吹きだすようにヒヒヒヒと笑いだした。