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こっきょう
国境
黒島 伝治
「戦旗」1931(昭和6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,336 字 · 21 页
三日たった。呉清輝は、一方の腕を頸にぶらさげたまま、起て橇に荷物を積んだ。香水、クリイム、ピン、水白粉、油、ヘアネット、摺り硝子の扇形の壜、ヘチマ形の壜。提灯形の壜。いろいろさまざまな恰好の壜がはいったボール箱が橇いっぱいに積みこまれた。呉は、その上へアンペラを置いた。そして、その上へ、秣草を入れた麻袋を置いた。傷ついた腕はまだ傷そうであった。しかし、人には、もうだいじょうぶだ、癒った、と言った。
「一人で出かけるのかい!」
田川は訊ねた。
「うむ、お前も行きたいか? 連てってやろうか」
呉清輝は、小鼻でくッくッと笑って、自分の所有物を纏めた。河のかなたへってしまうのだ。
「俺ゃ、まだ起られねえ」
晩が来ると、夜がふけるのを待たずに呉は出発した。
田川は、ベットに横たわっていた。
「気をつけろよ」
呉は出かけに言った。
「ああ」
一時間して、おやじが支那人部屋へとびこんできた。おやじは、また、郭進才の場合のように呉の床箆子の附近をさがしまわって、破った、虱のいる肌着が一枚丸めて放ってあるのをつまみ上げ、舌打ちをした。
「チッ! まったく、油断もすきもならん! 貴様は、こらッ、田川! ここに寝ていて呉が何をしていたか分ったであろうが!」