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どげざ

土下座

和辻 哲郎

「光」1921(大正10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,321 字 · 5 页

青空文庫

ある男が祖父の葬式に行ったときの話です。

田舎のことで葬場は墓地のそばの空地を使うことになっています。大きい松が二、三本、その下に石の棺台、――松の樹陰はようやく坊さんや遺族を覆うくらいで、会葬者は皆炎熱の太陽に照りつけられながら、芝生の上や畑の中に立っていました。永いなじみでもあり、また、癇癪持ちではあったが、心から親切な医者として、半世紀以上この田舎で働いていた祖父のために、ずいぶん多くの人が会葬してくれました。

式が終わりに近づいた時、この男は父親と二人で墓地の入り口へ出ました。会葬者に挨拶するためです。入り口のところには道側の芝の中に小さい石の地蔵様が並んでいました。それと向かい合った道側の雑草の上に、荒蓆が一枚敷いてあります。その上に彼は父親と二人でしゃがみました。そこへ来るまで彼は、道側に立って会葬者にお辞儀するのだろうと考えていましたが、父親がしゃがんだので同じくまねをしてしゃがんだのです。

やがて式がすんで、会葬者がぞろぞろと帰って行きます。狭い田舎道ですから会葬者の足がすぐ眼の前を通って行くのです。靴をはいた足や長い裾と足袋で隠された足などはきわめて少数で、多くは銅色にやけた農業労働者の足でした。