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とちにかえる
土地に還る
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,523 字 · 22 页
それを笠井直吉に語るのが嬉しそうでもありました。
大きな籠を持って、野菜物をもらいに、直吉の畑へやって来た、或る時のことです。小さく区切った畑地の境界線伝いに、道路からはいって来て、瓦礫の堆積にちょっと踏みかけた時、正子はよろけて、籠を投げ出すと共に、自分の体も地上に投げ出しました。直吉が駆け寄ってゆくと、彼女はもう起き上って、大きく見える眼と口で笑いました。そして独語のように言いました。
「足が不自由なのは不便だわ。」
それから彼女は直吉の顔をじっと見て、同感を求めるように言いました。
「でも生れた時はこんなじゃなかったんですものねえ。」
それが直吉にはよく分りませんでした。
「生れた時が……どうしたんです。」
「生れた時は、ちゃんとした身体だったんですよ。」
小さい時、学校にあがる前頃、関節炎かなにかそんな病気をして、それから足が悪くなったのだそうでした。
「誰だって、生れつき片輪じゃありませんわ。」
「しかし、生れつきそんなのもあるでしょう。」
「それは別ですわ。」
彼女の言うところは、つまり、生れながらの不具者は別として、満足に生れて後に五体に損傷を受けた者は……ということなのですが、それから先を、彼女はこう言いました。