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とち
土地
豊島 与志雄
「青年」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页
街道には時々遍路者の姿が見えた。大抵二三人連れ立って、互に話をするでもなく傍見もしないで、路の埃を軽く立てながら通り過ぎていった。平助はいつも、その後姿を見えなくなるまで見送った。然し村人の誰彼が時折り通りかかるのに対しては、彼は余り愛相がよくなかった。
「精がでるなあ。」
そういう挨拶に対して、彼はただ「ああ」と気の無い返辞をして、すぐに向うを向いてしまった。
然しその頃から、平助はよく孫娘のおみつを荒地へ来さした。
おみつはもう隣村の小学校に通っていた。夏休みの間中は、庄吉の家へ生れっ児の子守にいっていたが、九月に学校が始まってからは、午後はすっかり隙だった。学校から帰って来ると、誰もいない開け放しの自分の家に飛び込んで、一人で勝手に食事をして、その朝おかねが拵えておいた弁当と渋茶の土瓶とを、平助の所へ持って来た。平助は自分で弁当を持って出ないで、おみつがそれを届けてくれるのを楽しみにした。そして夕方まで彼女を荒地に引止めておくことが多かった。
野田の旦那の長男の健太郎が、都の専門学校から夏の休暇に帰省した時、おみつは綺麗な麦稈帽子を貰った。