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とち
土地
豊島 与志雄
「青年」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页
凉しくなってええ。一降りざあーっと来なくちゃあ、暑くてとてもやりきんねえ。」
額の汗を前腕の袖で拭きながら、彼は親父の方をじろりと見やった。
「仕事が後れるじゃねえか。」
「少しくれえ後れたって何でもねえや。こんなに広い荒地だもの。身体でも痛めちゃあつまんねえ。」
「若えくせして、意気地のねえことを云うんじゃねえよ。」
「それでも、一体いつになったらこれが済むことか、分りもしねえからな。」
「仕事のあるうちがええんだ。」
「だがこんな仕事つまんねえな。」
「何がつまんねえ? このままにしておきゃあ、何の役にも立たねえ荒地だ。それをこうして拓えてみねえ、一段歩に何俵という米が出来るじゃねえか。」
「それがおいらの地所だったらなあ!」
「地所は旦那のものでも、仕事はおいらのものだ。よく考えてみねえ、後々まで残る立派な仕事だ。」
音吉は何とも答えないで、荒地の広さを目分量ではかっていた。平助は眼を外らして、遠く山々の頂に覗いている入道雲を、その山壌に立昇る一筋の煙を、また広々とした平野の上を、遙に眺めやった。ぎらぎらとした光が一面に漲っていた。彼は眩しそうに眼を瞬いた。