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トソンラン
土城廊
金 史良
「文芸首都」1940(昭和15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页
四
跛乞食は泥の中にこぼれ落ちた白米の粒を袋の中へ拾い入れつつ呟くのだ。
「んだ。やっぱ生きてらあ、せいぜい喧嘩するがええだ」
たそがれる土城の上には、土幕民達の黒い行列が長々と連なっていた。暴雨が降り続いて東側の低い沼地が大河のようになり、彼等は鉄道線路にまで出る道を捜すために騒ぎ合っているのだった。彼等は空腹を抱えて城内の方へ夕飯を貰いに出掛けるのだ。年寄りは杖をたよりに腰を屈めて佇み、子供達はよくぼやき、婦達は盛んに詰め寄って何かを心配顔に囁き合っている。
灰色の鳥打。鼻まで深く被された古中折。底の抜けた麦藁帽。濡れたぼやぼや髪。女の頭巾……そして皆裸足だった。
遠く北の手の石橋を貨物自動車が警笛勇ましく走っていた。
四
その一晩中先達はまんじりともしなかった。横になったとみると、今度はこんこんと咳にむせて起き上った。手の甲に吐き附かれた血痰を真蒼な顔でじっと見下ろす。暗闇の中でそれはぎらりと光っていた。
一番鶏が時をつくると彼はぼそぼそ支械を肩にかけて出て行った。婦は悄然と消え去る夫の姿をぼんやり見送っていた。雨は夜中にすっかり止んでいるが、まだ明方の空には険悪な雲が漂うていた。