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もぐら

土竜

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,991 字 · 21 页

青空文庫

一

灌木と雑草に荒れた叢は、雑木林から雑木林へと、長い長い丘腹を、波をうって走っていた。

茨の生える新畑は、谷から頂へ向けて、ところ斑に黝んでいた。

梅三爺の、一坪四銭五厘で拓く開墾区域は、谷のせせらぎに臨んで建った小屋の背後から続いていた。

今は緑の草いきれ。はちきれるばかりの精力に満ちた青草は、小屋の裏から起こるなだらかなスロープを、渦を巻き巻き埋めつくしていた。青草の中には紅紫の野薊の花が浮かびあがり、躑躅の花が燃えかけていた。そして白い熊苺の花は、既に茅の葉にこぼれかけていた。無理に一言の形容を求めれば、緑の地に花を散らした大きな絨毯であった。そして、開拓されたところは黒々と、さながら墨汁をこぼしたかのように、一鍬毎に梅三爺の足許から拡がって行った。

「父! この木、惜しいな。熊苺の木だで……」

養吉は鎌で、小さな灌木を叩いて見せた。

「ヨッキは、まだそんなごとばり。そんな木、なんぼでもある。」

「なあ、父!」

五歳になるよしが追従した。

養吉は、ちらとよしの方を睨むようにしたが、自分も否定していたと言うように、すぐに惜し気もなく鎌を入れた。