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ざいがくりゆう

在学理由

豊島 与志雄

「日本評論」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页

青空文庫

」

「君の思想だって……。」

「そうです。」

そして李が語るところに依れば、あの飲み屋は、彼がちょいちょい立寄るおでん屋を潤色したものらしく、「おやじ」とも面識があり、殊にその息子とは懇意にしている。親子ともに或る大きな印刷会社の植字工で、両者の関係もあの通りであって、李はその父子の立場に特殊な興味を持ち、あのような思想を以て息子を励ましている。なお底をわって云えば、父親が息子を指導するのは普通のことであるが、酒飲みで仕様のない父親を息子が労わり、自分の労苦で父親の飲み代を補助し、ああいう思想で逆に父親を指導するということは、愉快ではないかと云うのだった。

「どういうことがあっても、例えば、大地震があっても、息子が戦争に出るようなことがあっても、あの酒飲みの父親と勤勉な息子と、二人とも、あれで救われるのではないでしょうか。」

言葉は率直で顔はにこにこしてる李の様子を、吉村は煙草の煙ごしに眺めながら、「おやじ」一篇に対する自分の読みの浅さに虚を衝かれた心地がした。だが、何かまだしっくりしないものがあった。

「そう、君の作意はよく分る。だが、それにしては、全体の何だか古めかしい感じは、どうしたんだろうね。