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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

「己は今、いい気持になってうっとりしかけたのだが――己はすんでのことで大変なことをしかけたのだ。自然、この見渡す限りの自然がどうして己にとってうっとりするほどの恩寵に充ちた世界だろうか。コペルニクスという人、西洋の学者は地球は廻っているということを教えてくれたが――それが真理であることを知るまでは誰も知り得ないという人間でしかない……自然は決してうっとりするような恵み深いものでないのだ。己が今うっとりしかけたのは己の心に油断が生じたからなのだ。もし自然が恩寵深いものなら、第一、己のこの肉体の醜悪で、虚弱なのは何と言ってよいのだろうかな。どうしたって己は自然は残酷なものと断定しないわけにはゆかない。そうじゃないか、お光。無論お前は美しいから己に反対するかも知れないが――」

お光は、じり/\焼け爛れた日中に寂しそうに立っている、頭ばかり大きい、胴の短く細い、脚の短い兄の姿を正面から見る気になれなかった。幾度となく聴かされる兄の呪いではあるが、さてどうといって慰めようもないことであった。

「己は何のために生まれて来たものだろうか。この血の気のない萎びた皮膚、青白い細い手足、肋骨の一本一本見えすく胴、五尺に足らぬ躯幹、それから、あはははは、南瓜のような頭――これほど揃いも揃って醜悪に作らなくてもよさそうなものじゃ