轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

彼女は方々お得意先へお礼旁々廻って、仕事を集めていて遅くなったと言って、路であんまり甘そうなお饅頭があったので買って来たといって、卵形の饅頭を拡げて自分から先に食べるのであった。平一郎はその母の穏やかな様子を見ると、いままで忌わしい疑念を抱いていたことを恥じ恐れずにはいられなかった。彼は嬉しくなって、自分のために夜遅くまで仕事を集めに歩いている母の苦労が思われて、すまない気と、嬉しい気でいっぱいになった。彼は饅頭を食べながらもう少しで和歌子のことを打ち明けてしまうところだった。それ程彼は歓ばされていたのだ。

「ことによるとわたし達は冬子さんのいる春風楼へゆくことになるかも知れませんよ。あすこの離室が空いているから、そこをお前の勉強室なり、寝室なりにしておいてね」

「で、母さんは何をするのです」

「あすこの家のお仕事(裁縫)を一手ですることになるかも知れませんよ」

こう寝しなにお光は平一郎に話した。次いで平和で健康な眠りが来た。

平一郎母子が借りている家の階下は芸娼妓の紹介を業としている人であった。遊郭の裏街、莨店や駄菓子屋や雑貨化粧品店や受酒屋やなどが廃頽したごみ臭い店を並べている間に、古びた紅殻格子の前に「芸娼妓紹介業、中村太兵衛」