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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

)不可思議な運命のはてしない曠野の道筋において「彼奴天野」が次第にまためぐりあわせ近づいてくる。

「小母さん、そうなすって下さい。いいえ、そうさせて下さいまし。暫くのお寂しいことは我慢なされば、そのうちに平一郎さんも大きくおなりなさるでしょうから。御自分の嫌な学校へ通わして置くのはわたしが考えても悪いことですわ。ね、平一郎さんを東京の中学へ入れなさった方がようござんしょう。――そのうちに半年も一年も経てば小母さんも東京へ出ていらっしゃるようになるとようござんすわ」

明らかに冬子は昂奮した。(まだ娘であった時分に、誰一人頼るものもない自分の面倒をみてくれたお光でないか。)そのお光のために平一郎の一身の立つよう世話をすることは嬉しいことである。お光は冬子の言葉から熱烈な、峻酷な、運命の宣言を聞いた。破壊した平一郎の生活がこのまま過ぎて元通りになりそうに思われない。東京へ出して、大きな邸から東京の自由な学校へ通わしたならあるいは平一郎の心の傷も癒えるかも知れない。しかし、相手は「天野一郎」の「天野栄介」だ。自分達にとっては仇敵の「天野栄介」の世話になる? そういうことが出来ようか。